4Cとは何か?売る視点から“選ばれる”視点へシフトする考え方
4Pに慣れた人ほど陥りやすい“売り手目線”
マーケティングを学ぶと、まず出てくるのが「4P」。これは商品を“どう売るか”という視点で考えるフレームワークです。
一方で、4Cはその逆。
売り手の都合ではなく、「お客さんの視点」で物事を考えるための思考法
なのです。
現代はモノが溢れ、選ばれる時代。
商品を“押し売り”するのではなく、「どうすれば自然に手に取ってもらえるか」を考えることが求められています。
この「売る」から「選ばれる」への思考の転換こそ、4Cの最大の意義です。
4Pと4Cの違いをざっくり整理すると?
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Product(製品) → Customer(顧客)
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Price(価格) → Cost(顧客にとってのコスト)
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Place(流通) → Convenience(利便性)
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Promotion(販促) → Communication(対話)
それぞれの視点を「売る側」から「買う側」に変換することで、まったく違うアイデアが生まれたり、既存のサービスの改善点が見えてきたりします。
なぜ今4Cが注目されているのか?
消費者が「自分で情報を選び、判断する力」を持っている現代。
検索すれば比較検討できるし、SNSで評判も調べられる。
広告をたくさん打てば売れる時代ではなくなりました。
つまり、“自分で選ぶ時代”になったということ。
だからこそ、4Cのように「お客さん目線」での設計が大切なのです。
4Cはすべて「想像力」から始まる
4Cで大事なのは、調査データよりも「想像力」。
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この商品を買う人は、どんな状況だろう?
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どんな不安や期待を抱えている?
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どうすれば、気持ちよく購入できる?
こうした「相手の立場になって考える」ことが、4Cを活かす第一歩。
このあとは、4Cの1つずつをやさしく深掘りしていきます。
まずは「Customer(顧客)」から。
どんな人の、どんな感情に寄り添えるかを一緒に見ていきましょう。
あなたの頭の中に“お客さんの世界”を描きながら読み進めてください。
2. Customer(顧客)〜“誰のために、何のために”を突き詰める
「お客さんって誰?」をもっと深く考える
マーケティングにおいて、「ターゲットを決めよう」と言われます。
年齢、性別、地域、職業など、いわゆる属性情報で分類するのが一般的です。
しかし、4CでいうCustomerとは、それだけでは足りません。
「その人が、今、どんな気持ちで、どんな状況で、何を求めているか?」
ここまで想像できて初めて、“本当に寄り添う”マーケティングになります。
顧客理解は「表面」ではなく「心の奥」まで
たとえば、同じ「30代女性会社員」でも、以下のように状況はまったく違います。
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Aさん:子育てと仕事の両立に毎日ヘトヘト。癒しがほしい。
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Bさん:趣味に生きる独身ライフ。推し活が日課。
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Cさん:転職したばかりで、不安と期待の入り混じる日々。
属性は同じでも、感情も欲求も全然違いますよね。
「誰に売るか」ではなく、「どんな感情に寄り添うか」が、4CのCustomerの視点です。
あなたの商品は、誰の“どんな悩み”を解決する?
4Cで考えるとき、最初に問いたいのはこの問いです。
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その商品は、どんな悩みや不安に寄り添っているのか?
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その人が、なぜそれを欲しいと思うのか?
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他に選択肢がある中で、なぜあなたの商品を選ぶ理由になるのか?
商品やサービスは、すべて「何らかの感情」を癒すものです。
安心したい、不安を減らしたい、癒されたい、効率化したい、満たされたい、自分らしくありたい…
これらの“感情”にアプローチできると、強い共感と選ばれる理由が生まれます。
顧客像を想像する4つの切り口
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状況:どんな生活を送っている?(仕事、家庭、環境など)
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感情:日常でどんな気持ちを抱えている?
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課題:何に困っていて、どんな不満がある?
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理想:本当はどうなりたいと思っている?
この4つを深掘りするだけで、売り方や伝え方がガラッと変わってきます。
実例:ハンドメイド雑貨のターゲットが変わったら?
元々「20代女性向けのおしゃれ雑貨」として販売していたあるハンドメイド作家さん。
販売が伸び悩む中、ターゲットを「仕事と家事の合間にほっとしたい30〜40代の女性」に変更。
商品説明も「おしゃれ」から「手に取るたびに気持ちが和らぐ」と感情ベースに変えたところ、売上が2倍に。
「相手の暮らしや気持ちに寄り添う」だけで、こんなにも違うんです。
「誰に売るか」ではなく「どんな感情に応えるか」
Customerという視点は、ただの属性やデモグラではなく、 「その人の暮らしと気持ち」にどこまで寄り添えるか、を問うものです。
商品やサービスは、問題を解決するだけではなく、「感情を満たす」ものでもある。
あなたの商品が、誰の、どんな心に触れるものなのか——ぜひじっくり考えてみてください。
次は2つ目のC、「Cost(コスト)」について解説していきます。
お金の話だけではない、意外と見落とされがちなポイントがたくさんありますよ。
3. Cost(コスト)〜「高い・安い」では測れない“お客さんの負担”とは?
「値段」だけがコストじゃない!
「Cost(コスト)」と聞くと、多くの人が「商品の価格=いくらかかるか」と連想するかもしれません。
でも4Cで言うコストとは、
お客さんがその商品・サービスを手に入れるまでに感じるあらゆる“負担”のこと。
金額はもちろん、時間、手間、心理的ハードルなど、すべてが「コスト」になります。
どんな“見えないコスト”がある?
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説明が複雑で理解できない → 「分からない」という精神的負担
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注文までの導線が長い → 操作の手間という時間的負担
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壊れたら困る、失敗したらイヤだ → 不安という心理的コスト
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買いに行く時間がない → 行動のための物理的コスト
こうした「価格以外の負担」があると、お客さんはなかなか行動に移してくれません。
安くしても、売れない理由
「価格を下げれば売れる」と考えがちですが、実際にはそう単純ではありません。
たとえば、
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価格が安くても、品質に不安があると買われない
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セール中でも、使い方が難しそうだとスルーされる
つまり、「値段」だけを見て判断しているわけではないということ。
コストを減らす=買いやすさを増やす
ではどうすれば「コスト」を下げられるのでしょうか?
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迷わせない:情報を整理し、選びやすくする
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手間を減らす:導線をシンプルに、決済も簡単に
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不安を消す:レビューや返金保証、実績を見せる
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待たせない:納期・レスポンスの早さも価値になる
お客さんが「これならすぐに買える」と思える状況をつくることが、実は一番のコスト削減なのです。
実例:高くても売れるパン屋さんの秘密
あるパン屋さんは、1個300円と近所の店より少し高め。
でも、
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店内が清潔で入りやすい
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商品が見やすく並べられている
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スタッフの説明が丁寧で安心できる
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支払いがキャッシュレスでスムーズ
結果、「コスト」=不安や迷いを感じさせないことで、お客さんにとって“高くても価値がある”存在になっています。
まとめ:「安さ」ではなく「安心・手軽さ・スムーズさ」
Costは単に価格を下げるのではなく、「お客さんが行動しやすくなるための全体設計」です。
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情報がわかりやすいか?
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購入までの流れはシンプルか?
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不安を取り除ける要素があるか?
これらを見直すことで、売れない原因が“価格”ではなかったことに気づけるかもしれません。
次は3つ目のC、「Convenience(利便性)」について解説します。
「買いやすさ」が選ばれる大きな理由になること、きっと納得してもらえるはずです。
4. Convenience(利便性)〜“すぐ手に入る”は最強の価値になる
利便性=「お客さんがラクに行動できるか」
どれだけ良い商品でも、買える場所が限られていたり、注文が面倒だったりすると、お客さんは離れていきます。
つまり、利便性とは
「欲しいと思ったときに、すぐにストレスなく手に入れられる状態」
を指します。
今や、時間もエネルギーも有限。お客さんは“便利な方”を選ぶのが自然なのです。
こんな場面、あなたも経験ありませんか?
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ネットで見つけた商品が気になるけど、購入ページにたどり着けない
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買いたいけど、会員登録が面倒でやめた
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コンビニにあったから、ついでに買った
これらはすべて「Convenience(利便性)」が購買行動に与える影響の例です。
利便性を高めるための4つの視点
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どこでも買える
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オンライン・実店舗の併用、マルチチャネル化
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すぐ届く・すぐ使える
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発送の迅速さ、ダウンロード即利用など
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手続きが簡単
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決済方法の選択肢を増やす、ボタン一つで注文できる
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導線が明確
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欲しい商品にすぐアクセスできるサイト・UI設計
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実例:Amazonが選ばれ続ける理由
Amazonは、利便性を極限まで追求した企業の代表格です。
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欲しい商品が必ず見つかる検索性
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クリック1つで注文できる仕組み
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プライム会員なら翌日配達や動画も視聴可能
結果として、「迷ったらとりあえずAmazonで探す」という行動が日常化しています。
あなたの商品は「今すぐ手に入る」状態か?
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SNSで紹介した商品は、そのまま購入できる導線があるか?
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決済方法が1つしかない(銀行振込だけ)なんてことはないか?
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説明ページやFAQは、迷わず読める場所にあるか?
利便性は、“お客さんの熱量が冷めないうちに買えるかどうか”を決める大事な要素です。
まとめ:「便利さ」は最高の売り文句
お客さんは、時間も手間もかけずに「欲しい」を叶えたい。
あなたの商品やサービスが「買いやすい」「わかりやすい」「すぐ届く」状態になっていれば、それだけで選ばれる確率はグッと高まります。
次は4つ目のC、「Communication(コミュニケーション)」についてお話しします。
単なる“お知らせ”ではなく、心と心をつなぐ“対話”の力について見ていきましょう。
5. Communication(対話)〜伝えるのではなく「つながる」ための仕組みづくり
お知らせはもう届かない?
かつては「テレビCM」や「新聞広告」といった一方通行の“お知らせ”が主流でした。
ところが現代は違います。
お客さんは「ただの宣伝」に敏感で、スルーする力も鍛えられています。
そんな時代に必要なのが、「届ける」ではなく「つながる」という視点。
つまり、Communication(対話)とは、
一方的に情報を発信するのではなく、お客さんと信頼関係を築くこと
が目的なのです。
「対話」の形は1つじゃない
対話といっても、直接の会話だけではありません。
むしろ今は、以下のような様々な形で対話が生まれています。
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SNSの投稿とコメント欄でのやりとり
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商品レビューやお客様の声に対する返信
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LINE公式アカウントでの個別メッセージ
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YouTubeやブログのコメント返し
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アフターサービスやメール対応の丁寧さ
これらすべてが、「このブランドは私のことをちゃんと見てくれている」と感じてもらえる大切な接点になります。
売らずに“共感”を届けるコミュニケーションとは?
「今すぐ買ってください!」ではなく、
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なぜこの商品を作ったのか
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どんな人に届けたいのか
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お客さんからどんな声をもらったのか
こうしたストーリーや想いを伝えることで、お客さんの中に共感や安心感が生まれます。
信頼を築くことができれば、「この人(会社)から買いたい」と自然に感じてもらえるようになるのです。
実例:小さなコーヒー店がSNSで全国にファンを持つまで
ある地方のコーヒー店は、地元では知る人ぞ知る存在でした。
しかしSNSで「毎日の焙煎日記」や「失敗談」「お客様の投稿の紹介」などを丁寧に発信したところ、
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投稿に毎日コメントがつくように
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通販サイトへのアクセスが増加
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定期購入者が全国から現れる
など、「対話」を続けた結果、ファンが自然と広がっていきました。
信頼は、一度築ければ“最強の資産”になる
広告費をかけて集めた新規のお客さんより、 一度信頼関係を築けたお客さんの方が、
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リピートしてくれる
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クチコミをしてくれる
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不具合にも寛容になってくれる
など、長期的に見てビジネスの安定に貢献してくれます。
だからこそ、コミュニケーション=信頼の積み重ねと捉えることが重要なのです。
「伝える」ではなく「一緒にいる」感覚へ
4Cの最後のC、Communicationは単なる情報発信ではありません。
「自分たちはどんな価値を届けたいのか」 「お客さんはどんな気持ちでそれを受け取っているのか」
そこに“つながり”が生まれることで、初めて「選ばれるブランド」になっていくのです。
次は最終章として、4Cのすべてをどう実践に落とし込むか? 具体的な活用方法や考え方をまとめていきます。
6. 4Cを実践するには?ビジネスに落とし込む5つのステップ
「知って終わり」にしないために
ここまでで4Cの基本と、それぞれのCが意味することは理解できたはずです。
では実際、自分のビジネスやアイデアにどう活かせばよいのでしょうか?
答えは、「自分のサービスや商品を、4Cの視点で見直すこと」から始まります。
ステップ1:Customer(顧客)を具体的に描く
実例:
オーガニック化粧水のブランドがターゲットを“感情ベース”で再定義
当初「20〜30代女性向け」としていた商品を、 「仕事や人間関係でストレスを感じ、夜のスキンケアで心を落ち着けたい人」へと再設定。
キャッチコピーやデザイン、香りまで一新したところ、 「これ、まさに私のこと」とSNSで話題になり、売上が急上昇。
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あなたの商品は、どんな人にとって価値がありますか?
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その人は、どんな悩みや理想を持っていますか?
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どんな気持ちであなたのサービスに出会い、使おうとしているでしょうか?
属性だけでなく、“生活”や“気持ち”の部分まで想像してください。
ステップ2:Cost(コスト)を見直す
実例:
「忙しい社会人がレッスン時間を確保しづらい」という声に応え、 予約不要の“今すぐレッスン”機能を導入。
また、講師選びの迷いをなくすために「おすすめ自動マッチング」も追加。 結果、初回登録からの成約率が1.7倍に向上した。
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価格以外に、手間や不安、迷いなどの負担はありませんか?
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サイトの導線、購入までの流れ、説明のわかりやすさなどに改善点は?
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お客さんが「安心して買える」状態になっていますか?
「安くする」ではなく、「負担を減らす」という視点がポイントです。
ステップ3:Convenience(利便性)を高める
実例:
LINEで「朝に取り置き予約→昼休みに受け取り可能」という仕組みを導入したところ、 お昼の販売数が前年比180%に。
行列ができやすい人気パン屋が、混雑による“待ち時間コスト”を解消。
「待たずに買える便利さ」がリピーターを増やした。
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すぐ手に入る・すぐ始められる環境になっていますか?
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スマホ1つで完結できる仕組みがありますか?
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支払い方法や連絡手段は、お客さんにとって便利ですか?
便利さは、熱量が高いうちに購入につなげる重要な要素です。
ステップ4:Communication(対話)を始める
実例:地元のカフェがInstagramの“日常発信”で全国にファンを獲得
小さなカフェが、毎朝「店主のつぶやき」や「今日の気まぐれメニュー」をInstagramで投稿。
やりとりを通じてファンとの距離が縮まり、 「旅行の目的地にこのカフェを選ぶ人」まで登場。
広告なしでも売上が安定し、「応援される店」になっている。
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一方通行の「お知らせ」になっていませんか?
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お客さんの声を拾い、それに反応する仕組みはありますか?
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自分たちの“想い”や“裏側”をちゃんと発信していますか?
“伝える”よりも、“共に歩む”感覚が共感を生みます。
ステップ5:すべてを“つなげて”考える
4Cはそれぞれ独立しているようで、実は密接に関係しています。
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顧客を深く理解すれば、どんなコストが負担になるかも見える
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負担を減らせば、利便性も高まり、選ばれやすくなる
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選ばれた後に、信頼を育てるコミュニケーションがあることで、リピーターやファンが生まれる
この流れを一つのストーリーとして設計していくことで、「売れる」ではなく「選ばれる」仕組みができていきます。
まとめ:4Cは“マーケティングの答え”ではなく、“問い直す力”
4Cは、「こうすれば売れる」という正解を与えてくれるフレームワークではありません。
それよりも、
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本当にこの人のためになっているか?
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自分の思い込みで売ろうとしていないか?
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相手の暮らしに寄り添えているか?
こうした“問い直し”の視点をくれるのが、4Cの真の価値です。
このフレームを手に、自分のビジネスや活動を見つめ直すことで、「どう伝えるか」ではなく「どう届けるか」が見えてくるはずです。
あなたの想いが、誰かの「ちょうどよかった」に変わる未来を願って──